上海蟹

このページは、中国の食べ物を紹介していきます。

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更新日:
 2012年4月13日



◎上海蟹(シャンハイガニ)
 揚子江沿いで採れる毛ガニの料理。

 上海蟹とは、上海で秋の味覚の代表と言われているものです。上海蟹は、チュウゴクモクズガニ(学名Eriocheir sinensis H. Milne-Edwards, 1853、英名:Chinese mitten crab)という種類の蟹です。中国および朝鮮半島東岸部原産のイワガニ科のカニの一種です。以前は「シナモクズガニ」(支那藻屑蟹)と呼ばれていましたが、近年では、あまりこの名称は用いられていません。日本では、一般に「上海蟹(シャンハイガニ)」と呼ばれています。
 チュウゴクモクズガニは、中国語では「中華絨螯蟹」(拼音: Zhōnghuá róng'áoxiè)と呼ばれています。「中国の絨毛のあるハサミを持つ蟹」という意味で、その名の通り、大きく発達した一対のはさみ状の爪を持ち、その回りにはびっしりと絨毛が生えています。和名は、この絨毛を藻屑に例えています。
 中国の長江流域を主な生殖地にしていることから、日本人の間では「上海蟹」と呼ばれ、9月から11月頃、蘇州近郊の陽澄湖や無錫太湖で採れるものは特に「大閘蟹」(200gほど)と呼ばれ、珍重されています。
 主産地の長江沿いでは、ハサミは金色、毛は黄色い色をしていますが、四角い形の甲羅は青緑色をしています。蒸したり、煮たりすると、この甲羅が鮮やかな柿色に変わります。甲羅には、前から横にかけてノコギリの歯のようなトゲが4対あるので手を怪我しないように注意が必要です。大きい個体では甲幅(甲羅の幅)が7~8cm程度になります。輸送中に動き回ると、ハサミで傷つけあったり、足が取れたりするため、ワラや紐できちんと縛って、生きたまま売られているのが水産物市場でよく見られます。
 淡水性のため、中国では「河蟹」、あるいは「清水蟹」とも呼ばれています。幼生は、海水から汽水域で育つため親蟹は雄、雌ともに、産卵のために河口や海岸に移動する必要があります。主に秋に、河口で生殖した後、雌が海水域に移動して産卵することが知られています。腹部は薄い灰色で、7節に分かれており、雄は三角形、雌は俵型をしています。
 中国では「大閘蟹(ダージャーシエ、上海語:ドゥザッハ)」という呼び名が一般的で、上海、香港、台湾などでは、この名で知られています。「産卵のために下ってくるところを堰止めて取る」ことからとか、「閘」は「煮る」という意味の「煠」の訛とも言われているようですが、この語源は定かでないそうです。
 輸送中に動き回ると、はさみで傷つけあったり、足が取れたりして傷が付くため、藁や紐で十文字に縛って生きたまま売られるのが一般的です。海の蟹より小さいため、脚の肉などは食べにくく、量も少ないものの、甲羅の中の内子や蟹味噌は、まったりと濃厚で、非常に美味です。
 最も有名な産地は、江蘇省蘇州市にある陽澄湖です。陽澄湖は1万年以上前にできた底浅の天然湖であり、湖底は鉄質の岩で、プランクトンなどの繁殖が少なく水質がいいことが、美味しい蟹を生み出す理由だと言われています。また、湖底が非常に硬く、滑りやすいために蟹がふんばり、肉が発達し、身がギュッと詰まるから美味しくなるとも言われているそうです。
 江蘇省内では、洪沢湖(泗洪県など)、高宝湖(高郵市)、白馬湖(宝応県)、射陽河(興化市)などでも養殖されています。上海市内では長江の中にある崇明島(崇明県)が大規模な産地として知られています。実際には、地元江蘇省の沿岸地域、崇明島で一貫して養殖されている以外にも浙江省、福建省、遼寧省などの沿岸地域で産卵からメガロパ幼生になるまでの飼育を行い、その後、江蘇省の他、安徽省石臼湖、巣湖、江西省、湖南省など、長江の上流地域に移して出荷できるまでの大きさに育てられる事が多いようです。これは、長江流域の方が味が良いからだそうです。
 上海蟹の旬は、「九円十尖」(九圓十尖、九圆十尖)という言葉で言い表されています。これは、太陰暦の9月には腹が丸い雌蟹が美味しく、10月には尖った雄蟹が美味しいという事を言い表しています。現在は太陽暦が採用されていますので、現在のカレンダーでは10月は雌の蟹、11月は雄の蟹が旬となります。10月頃は雌が甲羅の中にオレンジ色の内子(中国語、蟹黄)を持っており、これがほくほくして非常に美味しいです。また、陽澄湖の周辺では「西風響、蟹脚癢」という諺があり、冬の西風が吹いてくると、雄蟹の脚がむずむずする(動きが活発になる)のだそうです。これは、生殖時期が来たことを言い表しており、雄の味噌(中国語:蟹膏、膏脂)と肉が旨くなる時期を意味しています。
 上海蟹の蟹味噌は灰色ではなく黄色です。上海蟹は肺気腫や気胸を引き起こす肺臓ジストマの一種、ベルツ肺吸虫(Paragonimus pulmonalis (Baelz, 1880))の中間宿主であるため、生の状態で甲羅を割ると、みそや体液などと共に飛び散って、皮膚や食器などに付着し、生きたまま人体に入る可能性があり、危険です。ベルツ肺吸虫は加熱すれば死滅するので、加熱調理すれば問題ありません。
 上海蟹の醍醐味は、メスの蟹味噌とオスの白子が美味です。一般的には「蒸蟹」という食べ方が有名です。生きた蟹をタコ糸でしっかりと結び、シソの葉を敷いたセイロで一気に蒸し上げます。(通常、蒸し上がるのに25分~40分ほど、かかります。)青黒い甲羅は、蒸し上がると鮮やかな琥珀色に変わります。そのアツアツの蟹の甲羅を開いて、鎮江産の黒醋でいただくのが美味しい食べ方です。小さめのカニスプーンで肉や蟹味噌、卵をすくって食べるので、ちょっと面倒に感じるかもしれません。調味料は黒醋とキザミ生姜だけというシンプルさで、蟹の美味しさを味わうのが通常の楽しみ方です。
 中国の陰陽道では、蟹は身体を冷やす「陰」の食べ物と言われているため、身体を温める効果のある「陽」の食べ物である紹興酒や、食後に出てくる葉生姜湯(ショウガも身体を温める)を食べて陰陽のバランスを整えるのが一般的です。先ほどのキザミ生姜も、中国的な考えでは、非常に理にかなった食べ方ということになります。
 これ以外の食べ方としては、「酔っ払い蟹」があります。生きたままの上海蟹を醤油などの調味料を加えた老酒に3週間ほど漬けたものです。紹興酒の甘みとミソの深い味わいが絶品です。
 上海では、毎年、秋になると「蟹、何杯食べた?」というのが上海人同士の挨拶になるくらい庶民に愛されている料理の1つです。下記のような料理が有名なものです。



・蒸し蟹
 一番簡単で、蟹自体の味が楽しめる料理です。藁で縛ったままの状態で蒸し器に入れて、15分から20分程度蒸します。蒸し上がったら、藁を切り取って、皿にのせて食卓に出します。生姜の細切りを入れたお酢をつけて食べます。

・酔蟹(酒漬け蟹)
 酒のつまみとして食べられることが多い料理です。1年か2年程度の小さ目の蟹を、塩、胡椒、ウイキョウなどを白酒に入れたタレに漬けた料理です。ガラス瓶に入れて、密封して売られているものもあります。

・蟹黄小籠包(蟹味噌小龍包)
 メス蟹の蟹味噌を肉餡に加えた小龍包です。

・蟹黄豆腐
 カニミソのあんかけ豆腐です。カニ肉とカニミソのとろりとしたあんを豆腐にかけたもので、カニの旨みが凝縮したあんと淡白な豆腐の相性が素晴らしく美味しい料理です。




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